| 2005.3.18 ユナイテッドアローズ 竹内 明 |
 |
今 まで職業として、美しいもの、カッコイイもの、心地良いもの…などを目指し、20年近く洋服創りをしているが、その願いが叶った事は、多分一度も無かったと過去を振り返る事ができる。
|
 |
ひ ょんな事から昨シーズンより、佐々木選手のレーシングワンピースのデザインを、幣社販売促進課デザイナーの伊東と携わる事に恵まれた。アルペンを知る人なら一度は見た事があると思う、あの「花火」である。幼少時の記憶として、ずっと空を見上げ花火を見ていると、花火そのものの綺麗さより、燃え尽きた灰色と、その後に広がる暗い空との微妙な前後の位置関係が錯覚を生み、無限大の宇宙を思わせる奥行きに圧倒された印象が強く残っている。佐々木選手には言ってないが、実は、当時困難視された柄合わせより、その前後差を出す為に、灰色の位置や意味を製品製作者に強くお願した事を、今白状したいと思う。デザイン的には非常に単純だけど、「花火」を着た佐々木選手は、見る角度によって、身体の形が切り絵の様に見えたり、二人重なった様な錯覚を起こしたり、身体に奥行きを感じたりと、動きのあるものとなったと思う。う〜ん、自分で言うのも嬉しいが、今後、この完成度のデザインと会う事はないかも知れないと思う時もある(笑)。
|
 |
続 いて今シーズンのデザインであるが、まさに時代の気分…ヒッピー、プレッピー的な感情をストレートに、軽く、ポップに表現した感じになっている。その単純な古さを表現するのではなく、あか抜けて、かつ現代風のクラシック的な仕上げを狙ったものであるが、我々が一番言いたかったのは、「Peace」である。昨年は戦争やテロが勃発し、簡単に人の命が奪われていく。個人一人一人が、背負い込んだ物を大切にし、それを愛し、守ろうとし、執着し…自分のキャパ以上に背負い込みたくなった果ての究極が戦争だと私は思っている。自分も含めて、日々不安やプレッシャーを背負い生活を送っている人が大多数だろう。そんな時代だからこそ、もっと肩の力を抜いてRelaxingして、一つの事に固執せず、たまにはゆっくり歩いてみようよ!…みたいな感じかもしれない。
|
 |
年 に2〜3回しか彼に会わない私が、分かった様な偉そうな事は言えないが、過去にこんな事があった。昨シーズン、例の怪我?でワールドカップを休戦し帰国していた時の事で、年末に菅平で彼と会う機会があった。彼は、多分、板を替えながらのSLセットを数本滑り調整をしたのだと思うが、お忍びとはいえ、すぐに取り囲まれ、サイン、握手、写真攻めに合う事となる。特に小さな子供には目が無い様で、2〜3人抱えて一緒に滑る勢い(笑)であったほどと記憶している。ファンサービスはベッカム以上だろう(笑)。確かに今となっては笑い話だが、期待され、調子も良く、いいシーズンインと思った矢先の事だけに、普通なら、相当な重圧や焦りやイラダチを感じるはずなのに…。
|
 |
「Happy people in the world」今シーズンのレーシングワンピースのテーマであるが、これを着て、それを振りまきながら滑ってくる佐々木選手を見ていると、彼は本能的に、一番大切なものが何なのかを分かっているのだと思う。多分、彼は、「自分は」とか「自分に」とか「自分を」とか、別の言葉で言うと「我」というものを強く持ち合わせていないだと思う。自分を強く持っている人は、人目を気にし、自分の失敗やキャパを認めず、知らず知らずに自分で自分をがんじがらめに縛ってしまう人が多いと思う。ワールドカップで緊張しないのも、怪我をしても焦らないのも、スキーで誰の前で転んでも平気なのも、自分の失敗談も手柄の様に話してしまうのも…そんな事は二の次だと、小さな事だと思っているとしか私には思えない。例のワンエイティ…あれを見て、どれだけの人が「ホッ」とし、肩の荷が下りた事だろうか。特別外国語が堪能ではないと言われる彼でも、感受性の強い外国人は、レース時の佐々木選手だけでなく、彼の天真爛漫さをすぐ見抜き、ファンになるのであろうと私は思う。今後も、ワールドカップに風穴を開け続けて欲しいものだ。
「Happy people in the world」…佐々木選手にこのデザインは無用だったかもしれないと、今になって反省している(笑)。
|
 |