| 2005.2.16 SSA代表 小田島賢 |
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2 005年イタリア・ボルミオでの世界選手権が終わった。前回同じ場所での世界選手権は私がヨーロッパに渡ってから初めてのスキーシーズン(1984/1985)であり、マーク・ジラルデリ全盛の時代で特にSLでは優勝は間違いないといわれていたのに伏兵ヨナス・ニルソン(SWE)に100分の1秒差で敗れて銀メダルという番狂わせのレースだったので、今でも鮮明に覚えているが、しかしまさかその20年後に佐々木明に携わってこの地を訪れるとは思ってもいなかった。今回もイタリアらしさが出ていた大会であったし、まさかその中にRAIテレビ局のストで男子GSレースが中止になるという前代未聞の珍事までもが重なったのだからあきれてものが言えないとはこのことだろうか。
実際天候も快晴でバーンコンディションも完璧であり、そしてフランスやイタリアなどから多くの子供たちが観衆としてこのレースを楽しみに見に来ていただけに、労働者の権利というものは世界共通で認められるものではあろうが、しかしアルペンファンの気持ちも考えての決定だったのかは疑問が持たれる。各選手もコーチ陣もそしてスタッフ陣も皆が「信じられない」を連呼していたわりに、でも「ここはイタリアだから」と文章が結ばれるところがいかにもイタリアらしく、また世界中のアルペン関係者もなんとなくそれを受け入れてしまっていること自体が来年のトリノ五輪に不安を募らせてしまっているのかもしれない。 |
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| 佐 々木明の親友でドイツチームの若手スラローマー、フェリックス・ノイロイターとリフトに一緒に乗ったときのこと、同僚のアーロイス・フォーグルの目の調子はどうかと恐る恐る聞いてみた。「あまり良くないみたい。まだ右目の視力の10%しか回復していなくて・・・。入院して毎日右目の眼球に直接注射を2本も打っているんだ。すごく心配だよ。」と兄貴的な存在で今シーズン、ウェンゲンで苦労を重ねてきたうえに初優勝を遂げた同僚を本当に心配していた。彼はシュラドミングのSLレースのあと何らかの形で右目にウィルスが感染したらしく、そしてその原因自体がわからず、治療にも医師団は困っているという。もちろん今回の世界選手権も出場できる状態ではなく、ワールドカップ関係者は彼の1日も早い回復を本心で願っているのだ。ワールドカップに出場している選手たちは、特にトップ選手になると国籍に関係なく皆がファミリーになる。佐々木明もアーロイスにはいつも良くしてもらっているので常に心配してフェリックスに彼の経過について聞いていた。ドイツチームも彼のために一丸となってチーム戦を戦いたいと表明していてそれを現実にし、金メダルを取れたのはまさにミラクル。フォーグルもこの金メダルにはすごく勇気付けられたはずである。 |
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| 今 回の世界選手権はシュラドミングのふがいない成績を是正すべく、佐々木明は体のケアに多くの時間を費やした。全日本のメディカルドクターの石毛雄介氏も早めにチームに合流し、選手たちの体の状態をチェックし、レースに万全の状態でのぞめるように最高のケアをしていただいたと思う。特に選手すべてにいえたのは横の動きに必要な股関節まわりの筋肉が固くなっていたことが、すばやいエッジングから開放動作に持っていくまでの腰の内側への倒しの妨げになっていることが指摘された。明もそのことは事前に感じていたようで、股関節まわりの筋力を緩めてからスキーの技術が格段に良くなりスキーの切れも増していた。万全の状態でレースに臨むことができていたのである。しかし2月10日GSレースは中間まで非常にいいタイムできていたが最終部分でビンディングが外れて転倒リタイア、そして12日のSLレースでも1本目9位からの挽回を狙ったが2本目中間ラップまでマージンを伸ばしながらも残念ながらコースアウトをしてしまう。調子がいいときにいい成績が出るかというとそうではないときもあるというのがまさにレースである。 |
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| 実 際、今シーズンの明は忍耐力との戦いであるといっても過言ではない。やはり第1シードから随時表彰台に上れるクラスになるまでにもうひとつの壁を乗り越えなければいけない。他にもたくさんの選手がそれを経験し、トップ選手へとなっているからである。ドイツのアーロイス・フォーグルなどここまで10年近くかかってきて初優勝をしているし、マンフレッド・プランガーも優勝は一生できないのではといわれながらもついにキッツビューエルで初優勝を記録し、そのままシュラドミングでも連勝した。スポーツで飯を食うのはやはり楽な仕事ではない。好きなことで金を稼いで生計を立てるためにはそれなりの我慢や苦労を重ねるだけの忍耐力というのが仕事の一部になるのだと私は思う。このシーズンが来年でなくて良かったとも思うし、現在めまぐるしく経験を重ねてきていることが後に必ず生きてくると私は確信している。 |
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最 終日2月13日チーム戦での1コマ、金メダル獲得が絶望となった最終走者オーストリアのライナー・シェーンフェルダーがゴール前でくるっと向きを換えて後ろ向きでゴールした。明のようなスタイリッシュな180とはいかなかったが詰め掛けた多くの観衆の喝采を浴びた。オーストリア国営放送の名物実況のロベルト・セーガー氏が生中継で絶叫した。
「ライナーが”SASAKIターニング”でゴールした!!」 |
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